原作漫画「聲の形」の軌跡|掲載見送りから手塚治虫文化賞受賞までの道のり ドラマ映画アニメ★考察ラボ

原作漫画「聲の形」の軌跡|掲載見送りから手塚治虫文化賞受賞までの道のり

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衝撃のデビュー|入選作が掲載見送りになった理由

「聲の形」の物語は、2008年に遡ります。当時18歳だった大今良時は、高校卒業後すぐに第80回週刊少年マガジン新人漫画賞に本作を投稿し、見事入選を果たしました。通常であれば、副賞として増刊「マガジンSPECIAL」2008年12月号に掲載される予定でしたが、聴覚障害者に対するいじめをテーマにしていることなど内容の際どさから、編集部内で異論が生じ、掲載は見送られることになりました。

この決定により、「聲の形」は一時「幻の作品」となります。しかし大今はこの挫折にめげることなく、2009年から「別冊少年マガジン」で冲方丁の小説「マルドゥック・スクランブル」のコミカライズを担当し、漫画家としてのキャリアをスタートさせました。

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2011年の転機|別冊少年マガジンでの読み切り掲載

「聲の形」が世に出たのは、2011年2月のことでした。「別冊少年マガジン」2011年2月号に、オリジナル版をリメイクした読み切り版が掲載されたのです。この時の反響は凄まじく、該当号の読者アンケートでは「進撃の巨人」「惡の華」「どうぶつの国」などの連載作を抑えて1位を獲得しました。

この圧倒的な支持が、週刊少年マガジンへの連載を後押しすることになります。しかし、大今が連載版「聲の形」第1話の原稿をマガジン編集部の連載会議に提出した結果は「まずは読み切り掲載」というものでした。やむを得ず、大今は第1話を読み切り用に作り直すことで対応しました。

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2013年の本格始動|週刊少年マガジンでの連載開始

2013年3月、全面的な改稿を施されたリメイク版が「週刊少年マガジン」2013年12号に掲載されました。このリメイク版も発売翌日の18時までにTwitterで4000件を超える反響があり、掲載号のみ通常より売上が6万部伸びるという異例の事態となりました。

こうして、2013年8月7日発売の「週刊少年マガジン」36・37合併号から、ついに週刊連載が開始されました。連載期間は2013年36・37合併号から2014年51号までの約1年3ヶ月で、全62話が描かれました。単行本は2013年11月から2014年12月にかけて全7巻が刊行され、2016年9月時点で累計発行部数300万部を突破しています。

大今良時は足掛け約7年をかけて「聲の形」の物語を完成させたことになります。入選から掲載までに3年、そこから連載開始までさらに2年以上の歳月を要した本作は、まさに執念の結晶と言えるでしょう。

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物語の核心|いじめと障害を描く視点の革新性

「聲の形」の物語は、耳の聞こえる少年・石田将也と、耳の聞こえない転校生・西宮硝子の運命的な出会いから始まります。将也は硝子をいじめますが、やがて教室の犠牲者は硝子から将也へと移っていきました。幾年の時を経て、将也はもう一度硝子に会わなければいけないと強く思うようになります。

この作品の革新性は、いじめる側といじめられる側を固定化せず、視点を多角的に描いている点にあります。小学6年生のガキ大将だった将也は、退屈しのぎのために硝子をいじめの対象としますが、ある出来事をきっかけに自分がいじめられる立場へと転落します。いじめられて初めて、将也は自分のあやまちと硝子の強さに気付くのです。

大今は作中のキャラクターについて「決して悪者として描いているつもりはない」と明言しています。各キャラクターにはそれぞれの言い分があり、出てくるセリフや態度はそれらのキャラクターの偽らざる気持ちの現れだと述べています。深刻な問題をつきつけられて選択を迫られたときに、本音を言うことの重要性を描いているのです。

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数々の受賞|業界が認めた作品の価値

「聲の形」は連載中から高い評価を受けていました。2014年度「コミックナタリー大賞」では第1位を獲得し、「このマンガがすごい!2015」オトコ編でも第1位に輝きました。さらに「マンガ大賞2015」では第3位を獲得しています。

そして2015年、第19回手塚治虫文化賞新生賞を受賞しました。この賞は、優れた新人作家の作品に贈られるもので、「聲の形」が漫画業界において高く評価されていることの証明となりました。大今良時は地元である岐阜県大垣市からも評価され、2014年に大垣市文化連盟賞(生活文化部門)、2015年に第12回大垣市民大賞を受賞しています。

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作者・大今良時について|母の影響と創作の背景

大今良時は1989年3月15日生まれの女性漫画家です。高校3年生のときに週刊少年マガジンのMGP(マガジングランプリ)に初投稿し、その際に少年雑誌の決まりごととしてペンネームを男性風にしました。

特筆すべきは、大今の母が手話通訳者であるという点です。このため、「聲の形」に登場する手話の描写は、母の協力のもとで非常に正確に描かれています。また、姉もアシスタントとして制作に協力していたそうです。

大今自身のいじめの経験について、インタビューでは「なにがそんなにヤバいのかまだよくわかっていない」と答えており、直接的な体験を描いたというよりは、普遍的な人間関係の問題として作品を構築したことがうかがえます。

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舞台・大垣市との関係|聖地巡礼と地域振興

「聲の形」の舞台「水門市」は、作者の出身地である岐阜県大垣市をモデルに設定されており、実在するスポットの多くが作中に登場しています。大垣市との提携やキャンペーンなども様々な形で行われました。

2015年7月12日には、FC岐阜と横浜FCの試合(FC岐阜主催・長良川競技場)にてコラボマッチを実施。競技場では「聲の形」の原画展やコラボグッズの販売、大今良時のサイン会、デフフットサル(聴覚障害者によるフットサル)関連イベントなどが行われました。2017年2月12日からは、養老鉄道とのコラボ企画切符も発売されています。

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道徳教材化と実写DVD|教育現場での活用

「聲の形」は全日本ろうあ連盟監修のもと道徳教材化され、2015年には30分の実写DVDも制作されました。これは、作品が持つ教育的価値が認められた証拠と言えるでしょう。

いじめや障害者理解といった重要なテーマを、説教臭くならずに描いた本作は、教育現場でも活用されるようになりました。ただし、作品自体は決して読者に答えを押し付けるものではなく、「さあ、どうする」と問いかけ、読む側が自分で考える余地を残している点が特徴です。

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映画化決定まで|2014年11月の発表

2014年11月19日、最終話が掲載された「週刊少年マガジン」51号にて、劇場用アニメーション映画の製作が発表されました。そして2015年10月14日、続報として京都アニメーションが制作し、監督を山田尚子が務めることが発表されました。

原作の持つ繊細な心理描写と複雑な人間関係を、どのように映像化するのか。ファンの期待と不安が交錯する中、2016年9月17日の映画公開を迎えることになります。

原作漫画「聲の形」は、掲載見送りという逆境からスタートしながら、読者の圧倒的な支持を得て連載化され、数々の賞を受賞し、最終的には映画化まで実現した作品です。大今良時が18歳で描き始めてから約8年の歳月をかけて世に送り出されたこの物語は、今も多くの読者の心に深く刻まれ続けています。

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