はじめに
2024年10月より放送開始となったアニメ「ダンダダン」。
こちらは龍幸伸氏による原作漫画の持つ圧倒的な画力を、ハイクオリティなアニメーション技術によって見事に昇華させ、新感覚のSFオカルトホラーとして話題を呼んでいる。
緻密に構築された世界観、予測不能なストーリー展開、魅力的なキャラクターたち、そしてそれらを彩る鮮烈な映像表現は、多くの視聴者を魅了し続けている。
本稿では、作品世界をより一層深化させている音楽表現に着目し、その魅力を多角的に分析いたします。
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音楽担当:映像と音楽の融合を目指す鬼才・牛尾憲輔氏
「ダンダダン」の劇伴音楽を担当するのは、映画『聲の形』『ピンポン THE ANIMATION』、アニメ『チェンソーマン』『平家物語』など、数々の名作を手掛けてきた作曲家・牛尾憲輔氏です。牛尾氏は、映像と音楽の有機的な融合を志向した作品作りで知られており、「ダンダダン」においても、その卓越した手腕を発揮しています。
「ダンダダン」の音楽が織りなす三つの魅力
「ダンダダン」の音楽は、作品世界を多層的に表現し、視聴者に深い感動を与えています。以下に、その具体的な魅力を三つの観点から考察します。
オカルトと日常の対比を際立たせる音響演出
牛尾氏の音楽は、「ダンダダン」が持つ独特の世界観、すなわち、平凡な日常に潜むオカルト的要素と、非日常的なSF要素の融合を見事に表現しています。不気味な電子音や効果音で異形の存在の恐ろしさを強調する一方で、軽快なピアノやギターの音色で青春模様を描き出すなど、場面や状況に応じた音楽表現により、作品世界をより鮮明にしています。
登場人物の心情に寄り添う繊細な音楽表現
牛尾氏の音楽は、場面の雰囲気を盛り上げるだけでなく、登場人物たちの心情をも繊細に描写しています。例えば、主人公の一人である綾瀬桃が抱える苦悩を、悲壮感漂うストリングスで表現したり、もう一人の主人公である高倉健(オカルン)の興奮を、アップテンポなブラスサウンドで表現するなど、登場人物たちの内面を浮き彫りにする音楽表現は、視聴者の感情移入を促進する効果を生み出しています。
映像と音楽の高度なシンクロによる没入感の増幅
牛尾氏は、「ダンダダン」においても、映像と音楽の高度なシンクロを実現しています。例えば、桃が超能力を使うシーンでは、彼女の動作と音楽、効果音が完全に一致しており、スピード感と爽快感を演出しています。また、オカルンが呪いの力で変身するシーンでは、重厚なサウンドとダイナミックなカメラワークを組み合わせることで、変身シーンをより劇的に見せています。
オープニングテーマ「オトノケ」:Creepy Nutsが奏でる「ダンダダン」の世界観
アニメの顔とも言えるオープニングテーマを担当するのは、日本を代表するヒップホップユニット・Creepy Nuts。彼らの楽曲「オトノケ」は、一度聴いたら耳から離れない中毒性を持つ、まさに「ダンダダン」の世界観を象徴するような一曲となっています。
イントロから鳴り響く、和のテイストを取り入れた三味線のような音色が印象的。そこに、R-指定による畳み掛けるようなラップが重なり、一気に「ダンダダン」の世界へと引き込まれます。
歌詞にも注目です。「ヤマノケ」「トイレの花子さん」といった日本の有名な都市伝説や、ホラー映画の金字塔「リング」を彷彿とさせる歌詞など、「ダンダダン」のオカルト要素とリンクするワードチョイスが散りばめられています。
Creepy Nutsの持つ独特な世界観と、「ダンダダン」の持つオカルト要素が見事に融合した「オトノケ」。アニメ本編が始まる前の期待感を高める、最高のオープニングテーマと言えるでしょう。
エンディングテーマ「TAIDADA」:ずっと真夜中でいいのに。が紡ぐ、エモーショナルな余韻
エンディングテーマ「TAIDADA」を担当するのは、中毒性のあるサウンドと、文学的な歌詞で若者を中心に絶大な人気を誇る音楽ユニット・ずっと真夜中でいいのに。(通称:ずとまよ)。
「TAIDADA」は、疾走感のあるサウンドとは裏腹に、どこか切なさを感じさせるメロディーラインが印象的な楽曲です。ボーカル・ACAねの透き通るような歌声が、作品の世界観と見事にマッチし、アニメの余韻に浸りたい視聴者の心を優しく包み込みます。
歌詞は、一見すると抽象的な言葉が並んでいますが、よく見ると「ダンダダン」の登場人物たちの心情や、複雑な関係性を表現しているように感じられます。
例えば、「朝方の君が隣にいたらな」「四畳半の幸せでいいのに」といった歌詞からは、誰かと一緒にいたいと願う気持ちや、ささやかな幸せを求める気持ちが読み取れます。
「ダンダダン」の登場人物たちは、それぞれに複雑な事情を抱えながらも、懸命に生きています。そんな彼らの姿と、エンディングテーマ「TAIDADA」の歌詞が重なり合い、視聴者の心に深く響くのではないでしょうか。
音楽を通して「ダンダダン」の世界をもっと楽しもう!
今回は、アニメ「ダンダダン」の音楽の魅力について、BGM、OPテーマ、EDテーマを軸に解説しました。
牛尾憲輔氏による、映像と見事に融合したハイクオリティな劇伴音楽。Creepy Nutsが歌う、作品の世界観を凝縮したようなオープニングテーマ「オトノケ」。そして、ずっと真夜中でいいのに。が紡ぎ出す、エモーショナルなエンディングテーマ「TAIDADA」。
「ダンダダン」は、音楽を通して、その魅力を何倍にも増幅させている作品と言えるでしょう。アニメ本編はもちろんのこと、音楽にも注目して作品を鑑賞することで、「ダンダダン」の世界をより一層楽しむことができるはずです。