映画『リメンバー・ミー』が鮮やかに描く、メキシコの伝統と祝祭「死者の日」 ドラマ映画アニメ★考察ラボ

映画『リメンバー・ミー』が鮮やかに描く、メキシコの伝統と祝祭「死者の日」

はじめに

2017年に公開され、世界中で感動を呼んだディズニー/ピクサー映画「リメンバー・ミー」。舞台は、色彩豊かなメキシコの文化が息づく世界、そして物語の中心に据えられているのが、同国で毎年盛大に祝われる「死者の日」です。

本稿では、映画『リメンバー・ミー』を通して、メキシコの伝統的な祝祭「死者の日」とその背景にある文化、死生観について、詳しく解説していきます。
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「死者の日」とは?:日本のお盆との違い

「死者の日」とは、毎年11月1日と2日に行われる、メキシコにおける伝統的な祝祭です。日本では、お盆の時期に故人を偲びますが、「死者の日」は、陽気な雰囲気で故人の魂を迎え入れ、共に祝祭を楽しむという、独特の文化を持つ点が特徴です。

「死者の日」は、家族や親戚が集まり、故人への想いを込めて祭壇を飾り付け、ご馳走を供えます。街中では、マリーゴールドの花やガイコツのモチーフである「カラベラ」で飾られ、祝祭ムード一色に染まります。

『リメンバー・ミー』に見る「死者の日」の風習

映画『リメンバー・ミー』では、「死者の日」の美しい風習が、映像美も相まって鮮やかに描かれています。主人公ミゲルが迷い込む“死者の国”は、祝祭の灯りと活気に満ち溢れ、ガイコツたちが陽気に歌い踊る様子は、私たちの死生観に新鮮な驚きを与えてくれるでしょう。

「死者の日」の起源:先住民の文化とカトリックの融合

「死者の日」の起源は、スペイン人がメキシコに到来するよりもはるか昔、アステカ帝国などの先住民の文化に遡ります。古代メキシコの人々は、死は人生のサイクルの一部であると捉え、死を恐れるのではなく、むしろ祝福すべきものと考えていました。

その後、16世紀にスペイン人がメキシコを征服し、キリスト教(カトリック)が伝来すると、「死者の日」の伝統は、キリスト教の諸聖人の日(11月1日)と万霊節(11月2日)の習合し、現在の形へと変化していきました。

「死者の日」における重要な要素:祭壇、マリーゴールド、ガイコツ

「死者の日」には、欠かせない要素がいくつかあります。それぞれの意味合いを知ることで、「死者の日」への理解を深めることができるでしょう。

祭壇(オフレンダ):故人への愛を込めて

「死者の日」に欠かせないのが、家庭や墓地に作られる祭壇「オフレンダ」です。オフレンダは、故人があの世から戻ってくる際に迷子にならないよう、故人の写真を飾り、故人が好きだった食べ物や飲み物、思い出の品などを供えます。

マリーゴールド:故人を導く鮮やかな花

マリーゴールドは、「死者の日」に欠かせない花です。鮮やかなオレンジ色のマリーゴールドは、「死者の花」とも呼ばれ、その香りは、故人の魂をこの世に導くと信じられています。映画『リメンバー・ミー』でも、マリーゴールドの花びらが敷き詰められた橋が印象的に描かれています。

ガイコツ(カラベラ):死を身近に感じる象徴

「死者の日」では、ガイコツのモチーフである「カラベラ」を、砂糖菓子やチョコレートで作ったり、砂糖やチョコレートで装飾したりします。これは、死を恐怖の対象としてではなく、身近なものとして捉え、祝祭として楽しむという、メキシコ独特の死生観を表しています。

『リメンバー・ミー』で描かれる「死者の日」の色彩

『リメンバー・ミー』では、「死者の日」の祝祭ムードが、色彩豊かな映像美で表現されています。

鮮やかなマリーゴールドの道: 死者の国と人間界を繋ぐ橋として、マリーゴールドの花が咲き乱れる様子は圧巻です。これは、故人が迷わずに帰って来られるようにとの願いが込められています。

カラフルな切り絵「パペルピカド」: メキシコの伝統的な切り絵である「パペルピカド」は、祭壇や街を華やかに彩ります。映画でも、鮮やかなパペルピカドが、祝祭の雰囲気を盛り上げています。

個性的なガイコツたちの姿: 陽気なガイコツのヘクターをはじめ、個性豊かなガイコツたちが登場します。骸骨の姿をしているにも関わらず、彼らが陽気に歌い踊る姿は、死を恐れるのではなく、共に祝うというメキシコ独特の死生観を象徴しています。

家族の絆と記憶の大切さ:「死者の日」の真髄

『リメンバー・ミー』は、「死者の日」の華やかな側面だけでなく、その根底にある「家族の絆」と「記憶の大切さ」を感動的に描いています。

死者の国では、現世で忘れ去られた魂は、真の死を迎えるとされています。これは、人が真に生きる meaning は、愛する人々に記憶され続けることであるというメッセージとも捉えることができます。

主人公ミゲルは、死者の国での冒険を通して、家族の愛と記憶の大切さを実感し、自身のルーツと向き合っていきます。

「死者の日」から学ぶ、豊かな死生観

「死者の日」は、単なる祝祭ではなく、メキシコの人々の死生観、人生観が色濃く反映された、文化的に重要なイベントです。

死は終わりではなく、新たな生への通過点であると捉え、故人を偲び、共に喜びを分かち合う「死者の日」の伝統は、私たちに多くのことを教えてくれます。

映画『リメンバー・ミー』を通して、「死者の日」の持つ豊かな文化に触れ、改めて「家族の絆」や「生きていることの素晴らしさ」について考えてみてはいかがでしょうか?

まとめ:映画と現実が織りなす、メキシコ文化の魅力

本稿では、映画『リメンバー・ミー』を軸に、メキシコの伝統的な祝祭「死者の日」について解説しました。

映画で描かれる美しい映像と感動的なストーリーは、メキシコの文化への理解を深め、私たちの心に温かい光を灯してくれるでしょう。

「死者の日」は、近年、日本でもハロウィンのように仮装を楽しむイベントとして認知されつつあります。しかし、その背景にある文化や歴史、そして「死者の日」が持つ本来の意味を理解することで、より深く、意義のあるものになるのではないでしょうか。

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