はじめに
映画「ルックバック」。を観た人の多くが、ある事件を思い浮かべたのではないでしょうか。2019年に起きた、京都アニメーション放火殺人事件です。
作品内における「京アニ事件を想起させる描写」は、公開当初から様々な意見が飛び交い、物議を醸しました。
実際に、映画『ルックバック』と京都アニメーション事件は、無関係ではありません。
藤本タツキ氏自身も、インタビューで「事件の影響は大きい」と語っています。しかし、『ルックバック』は、決してセンセーショナルな表現や、事件を直接的に描いた作品ではありません。
今回は、映画『ルックバック』と京都アニメーション事件の繋がりを紐解きながら、作品に込められた「創作への祈り」について考えていきます。
こちらもチェック！
#アニメ映画感想
藤本タツキ先生原作の青春漫画映画「ルックバック」を鑑賞しました。切ない……だけど、生命は尊い。
京都アニメーション事件も思い出したりして、創作に携わるひとの生命が奪われること……ひとの生命、尊厳が損なわれることの辛さを感じました。… pic.twitter.com/ueAn8OEs0m— つぐみ静謐†読み専 (@kosei_nakao) September 4, 2024
「描きたい」という衝動、それを阻む影
映画『ルックバック』の主人公・藤野は、幼い頃から絵を描くことが大好きでした。
クラスメイトを楽しませようと、誰に頼まれるでもなく、漫画を描いていました。
一方、もう一人の主人公・京本もまた、卓越した画力を持つ少女でした。
二人は、お互いの才能に惹かれあい、共に漫画を描く喜びを分かち合っていきます。しかし、そんな二人を襲った悲劇。
「京アニ事件を彷彿とさせる」と話題になったシーンが訪れます。
才能に満ち溢れた京本が、理不尽な暴力によって命を奪われてしまうのです。
「なぜ、こんなにも残酷なことが起きるのか？」「なぜ、好きなことをやっている人たちが、こんなにも理不尽な目に遭わなければならないのか？」
それでも、ペンを置くことはできない。大切な人を失った藤野は、深い悲しみに暮れます。
「もう二度と漫画は描けない…」そう思っていた矢先、藤野は、京本の残した作品と出会います。
そこには、藤野へのメッセージが込められていました。
京本の言葉は、藤野の心を深く揺さぶり、再び創作へと駆り立てていくのです。
映画『ルックバック』は、決して絶望だけを描いた作品ではありません。
理不尽な暴力によって、未来を奪われたとしても、それでもなお、「創作への情熱」は受け継がれていく。
作品を通して、藤本タツキ氏は、そんな力強いメッセージを私たちに伝えているのではないでしょうか。
「ルックバック」– その先に続く未来へ
映画『ルックバック』は、私たちに、「創作することの意味」「生きることの意味」を改めて問いかけてきます。
「描きたい」という純粋な気持ち。
その想いは、時として、私たちを苦しめ、傷つけることもあるかもしれません。
しかし、それでもなお、私たちは「表現すること」をやめることはできません。
なぜなら、そこには、言葉では言い表せない、かけがえのない喜びと希望があるからです。
映画『ルックバック』は、京都アニメーション事件で犠牲になった方々への鎮魂歌であると同時に、すべての「表現者」への応援歌でもあります。
作品を通して、私たちもまた、創作の持つ力強さ、そして、未来への希望を感じ取ることができるのではないでしょうか。
私たちにできること — 「ルックバック」の先へ
「ルックバック」– 過去を振り返ることは、時に苦痛を伴います。
楽しかった記憶が、逆に、喪失の悲しみを鮮明にすることもあるでしょう。
しかし、それでもなお、私たちは「過去」と向き合い、「今」を生き、「未来」へと歩みを進めていかなければなりません。
映画『ルックバック』は、私たちに、そのことを力強く教えてくれます。
では、私たちにできることは一体何でしょうか？
それは、作品を通して、藤野と京本の「生きた証」を受け取ることなのではないでしょうか。
二人を結びつけた「漫画」という共通言語。
そこには、喜びも、苦しみも、そして、未来への希望も、すべてが詰まっていました。
私たちは、作品を「観る」だけでなく、「感じる」ことで、藤野と京本の想いを「未来」へと繋いでいくことができるのかもしれません。
アニメーションは、永遠に — 「ルックバック」が紡ぐ希望
京都アニメーション事件は、私たちに、あまりにも大きな悲しみと衝撃を与えました。
しかし、事件によって失われたのは、かけがえのない命や才能だけではありません。
「アニメーションに対する情熱」や「未来への希望」までもが、深く傷つけられました。
それでもなお、私たちは、アニメーションを愛し、その力を信じ続けることができます。
映画『ルックバック』は、そんな私たちの気持ちを代弁してくれるかのような作品です。
「ルックバック」– 過去を振り返り、現在を生き、未来を創造する。
作品を通して、藤本タツキ氏は、私たちに、そんなメッセージを投げかけているのではないでしょうか。
アニメーションは、決して「過去」のものではありません。アニメーションは、「今」もなお、進化し続け、「未来」へと続いていく、希望に満ちた表現手段なのです。
映画『ルックバック』は、そんなアニメーションの持つ無限の可能性を、私たちに改めて教えてくれる、希望に満ちた作品と言えるでしょう。
